
前編ではウェルスナビのサービスを解説し、自力で運用しようという話をしました。
今回はウェルスナビのポートフォリオを参考にしてオリジナルのポートフォリオをいくつか作り、成績を検証してみます。経費率の小さいETFを用いて、できるだけシンプルなポートフォリオを考えます。
検証方法
PORTFOLIO VISUALIZERというウェブサービスを使ってポートフォリオのバックテストを行います。リンク先の”Backtest Portfolio”をクリックすると、好きなポートフォリオを作って比較することができます。
運用成績はあくまで過去の株価データに対する成績であり、将来の成績を保証するわけではありません。過信しないようにしましょう。
PORTFOLIO VISUALIZERは無料で使用する場合、1度に3つのポートフォリオしか比較することができません。今回は、ウェルスナビのポートフォリオと、オリジナルのポートフォリオ2つを比較してみます。
(実際ご自分で試すときは、1度に3つしか比較できないとはいえ何回でも実行できるのでご安心を。)
ポートフォリオ1: ウェルスナビのポートフォリオ
リスク許容度が5 (最大) のときのポートフォリオは次の通りでした。
銘柄 | 経費率 | 保有割合 |
---|---|---|
VTI (米国株) | 0.03% | 35.0% |
VEA (日欧株) | 0.09% | 33.4% |
VWO (新興国株) | 0.15% | 16.1% |
AGG (米国債券) | 0.06% | 5.0% |
GLD (金) | 0.4% | 5.5% |
IYR (不動産) | 0.41% | 5.0% |
現金 | 0% | 0% |
株の割合が84.5%あります。債券と金が5%混ざっていて、王道という感じがします。
ポートフォリオ全体の経費率は0.11%です。
ポートフォリオ2: VTIだけでいいんじゃないか説
VTIとVEAには、強い正の相関があります。相関が強いということは、値動きが似ていることを意味します。VTIが好調な時はVEAも好調だし、VTIが不調なときはVEAも不調な場合が多いということです。
ならばVEAはポートフォリオから外して、代わりにVTIだけ買ってみましょう。VTIとVWOはそこまで相関が強くないですが、この際なので株は全部VTIにします。
また、債券やら金は現金に置き換えます。株を80%とすると、ポートフォリオは次のようになります。
銘柄 | 経費率 | 保有割合 |
---|---|---|
VTI | 0.03% | 80% |
現金 | 0% | 20% |
購入するETFはVTIだけで、とても管理が楽です。
ポートフォリオ全体の経費率は0.024%です。
ポートフォリオ3: VTIだけだと怖いからVTも買う
VTIはCRSP US Total Market Indexに連動しており、米国の上場銘柄をほとんど含んでいます。米国への投資はこれでOKだけど、日本や新興国に投資しなくていいの?と思う方もいるでしょう。
確かに米国株が強いのは分かるけど、生涯を通じて運用するなら全世界に分散したい、と考えるのは普通だと思います。そこで、VTIに加えてVT (バンガード・トータル・ワールドストックETF) も買います。
銘柄 | 経費率 | 保有割合 |
---|---|---|
VTI | 0.03% | 40% |
VT | 0.08% | 40% |
現金 | 0% | 20% |
ポートフォリオ全体の経費率は0.044%です。
比較
PORTFOLIO VISUALIZERでポートフォリオ1~3を作り、バックテストを行いました。
初期投資額は$10,000 USD、年に1回リバランスする設定にします。VTのデータが2009年からしかないので、投資期間は2009年~2021年になっています。
ポートフォリオ 1 (ウェルスナビ) | ポートフォリオ 2 (VTIのみ) | ポートフォリオ 3 (VTI + VT) | |
初期投資額 | $10,000 | $10,000 | $10,000 |
投資終了後の評価額 | $38,923 | $47,382 | $39,675 |
CAGR(年平均成長率) | 11.33% | 13.07% | 11.49% |
標準偏差 | 14.26% | 12.01% | 12.20% |
Sharpe Ratio (シャープレシオ) | 0.79 | 1.04 | 0.91 |
Best Year | 34.57% | 26.77% | 24.65% |
Worst Year | -9.43% | -3.79% | -5.61% |

投資終了後の評価額を見ると、ポートフォリオ2だけ$47,382と高く、ポートフォリオ1と3はほとんど変わらないことが分かります。CAGR(年平均成長率)やSharpe Ratioを見ても、ポートフォリオ2が優秀です。
ポートフォリオ2はVTIだけ買ったポートフォリオでした。結局、分かりきっていた気もしますがここ10年は米国市場が他国に比べウハウハだったということです。
じゃあVTIだけ買ってひたすら米国に投資するのがベストかというと、長い目で見るとそうとも言い切れません。

この図は、過去50年におけるMSCI World ex USA Index (米国を除く全世界) とS&P500 (米国) のリターンの比較を示しています。米国株式は1990-1999, 2010-2019の期間で他の国々を上回っていますが、それ以外の期間ではグローバルなポートフォリオのほうが成績が良いことが分かります。
米国市場は確かに大きいですが、全世界の半分くらいの規模です。米国以外の株式は米国と同じ値動きはしないので、分散させる価値があります。また、市場が異なるがために、米国市場の調子が悪いときは他の国々が上手く成長するかもしれません。そもそも株価が高いからと言って企業の収益も高いわけではないので、ビジネスが上手くいっているかどうかは別です。
近年の米国推しも気になります。2021年だからこそ、過去10年の成績を見て「米国株最強!」と結論付ける雰囲気がありますが、2010年だったら「やっぱり米国だけに任せるのはダメだな」と多くの人が言っていたでしょう。雰囲気に流されず、冷静になることが重要だと思います。
個人的には米国に重きを置くことに変わりませんが、米国100%ではなくグローバルにも投資するスタイルが好きです。
株以外の割合は、一般的に現金、債券、金などの安全な資産を置きます。債券や金を混ぜると、リターンが大きく伸びることはありませんが若干Sharpe Ratioが上がります(値動きがマイルドになり、安定したリターンを出す)。投資始めたてならば安全資産は現金でいいと思いますが、慣れてきたら債券や金などのコモディティも組み入れると良いと思います。全世界の株式に投資して債券や金も持つ、というふうにやると結局ウェルスナビのポートフォリオに近づきますね。
最後に、あくまで上のグラフはバックテストで過去の成績だということを忘れないようにしてください。
まとめ
この記事では、ウェルスナビのポートフォリオを元に、現実的に投資を始めやすそうなポートフォリオを作ってみました。
株は米国をメインにすることは問題なさそうですが、米国の調子が悪い場合も考えておきましょう。残りは安全な資産として現金、債券、金などを持ちましょう。現金でも問題はありません。
みなさんも気になるETFや構成があったらPORTFOLIO VISUALIZERで試してみてください。将来を保証するわけはありませんが、十分参考になるはずです。